商圏人口の調べ方|半径500m・1km・3kmの人口を出す方法と、駅前・郊外の計算例
「この物件の商圏人口を調べておいて」と頼まれたとき、最初に迷うのは、どの道具を使うかと、どの半径で見るかの2つです。ここでは、商圏人口の調べ方を、1地点だけ調べる場合と、候補地のリストがある場合に分けて整理します。後半では、駅前と郊外の2地点で半径500m・1km・3kmの人口を実際に計算した結果を並べ、半径によって見え方がどう変わるかを見ていきます。
論点1:商圏人口は「地点から半径◯m以内に住む人の数」
商圏人口は、お店や物件の場所を中心にした円の中に住んでいる人の数を指すことが多いです。元になるのは国勢調査の人口で、ふだん住んでいる場所で数えた人数(夜間人口)です。そのため、昼間だけオフィス街にいる人や、駅を通り過ぎるだけの人は含まれません。
国勢調査の人口は、円の形では公表されていません。500m四方のメッシュや町丁目といった区画ごとに公表されているので、円と区画が重なった部分を面積の割合で配る方法(面積按分)で計算します。同じ地点・同じ半径でも、使う区画や計算の仕方によって数字が少し違ってきます。仕組みは半径の人口がツールごとに違う理由で詳しく書いています。
どの半径で見るかは、お客さんが歩いて来るのか、自転車や車で来るのかによって変わります。半径の決め方は商圏人口の半径は何km?で整理しています。円がどこまで届くかを地図で確かめたいときの手段は、Googleマップで半径の円を描く方法にまとめました。
論点2:1地点だけなら、地図の道具で足りる
調べたいのが1か所だけなら、次の2つのどちらかで足ります。
jSTAT MAP(政府統計の総合窓口 e-Stat の地図機能)
jSTAT MAPでは、地図の上で地点を選んでエリアを作り、その中の国勢調査の人口や世帯数を集計できます。公式のヘルプには、ある施設を中心にした半径300mの世帯数を、面積按分で集計して表示する例が載っています。
e-Statのアカウントがなくても使えますが、機能に制約があります。アカウントなしで使えるのは、エリアやグラフの作成、シンプルレポートの作成などです。データとグラフをまとめたリッチレポート、住所のリストの取り込み、データの保存は、e-Statのアカウントでログインしてから使う機能です(出典:e-Stat「jSTAT MAPについて」)。操作の手順が多く、慣れるまでは少し時間がかかります。つまずきやすい点はjSTAT MAPが「難しい」と感じたら読む記事にまとめました。
タスデータの商圏レポート
住所を1つ入れると、半径の中の人口・世帯数・世帯の構成(単身・核家族など)と、最寄り駅を表にして返します。登録は要りません。地図の操作をせずに数字だけ欲しいときに向いています。
論点3:候補地がリストになっているなら、一括で付けるほうが早い
候補地が10件、20件とあり、同じ条件で並べて比べたいときは、1件ずつ地図で調べて転記するより、住所のリストにまとめて数字を付けるほうが手間がかかりません。タスデータでは、Excelの住所リストをCSVにしてアップロードすると、住所の右側に「半径◯mの人口」「世帯数」などの列を足して返します。元の列名は変えず、そのままExcelで開ける形です。
住所リストに、半径500m〜3kmの人口・世帯数の列を一括で付けられます。
データは2020年の国勢調査です。登録なしで10行まで試せます。
11行以上は、無料のアカウントを作ると使えます。1地点だけなら 商圏レポート(登録不要) もあります。
論点4:駅前と郊外で、半径を変えると何が違って見えるか
実際にタスデータで2つの地点を計算しました。1つはJR立川駅の北口の近く(東京都立川市曙町2丁目・駅から直線で約110m)、もう1つは埼玉県の入間市役所(入間市豊岡1丁目・入間市駅から直線で約780m)です。データは2020年国勢調査の500mメッシュで、面積按分で集計しています。
| 半径 | 立川駅前 | 入間市役所 |
|---|---|---|
| 500m | 9,432人 5,772世帯 単身 64% | 7,801人 3,517世帯 単身 33% |
| 1km | 38,235人 21,925世帯 単身 59% | 25,765人 11,220世帯 単身 32% |
| 3km | 226,624人 112,423世帯 単身 47% | 136,495人 58,209世帯 単身 31% |
上から人口・世帯数・単身世帯の割合(単身世帯数÷一般世帯数)。2026年10月にタスデータで計算。
各駅の乗降客数の推移と、駅の周りに住む人は、駅のページ(立川駅・入間市駅)で見られます。
半径500mでは、2つの地点の人口の差は1.2倍ほどです。半径を3kmに広げると、差は1.7倍に開きます。近くだけを見ると似たような規模に見えても、少し広く見ると周りに住む人の数がかなり違う、ということが分かります。
世帯の形も違います。立川駅前は、駅に近いほど単身世帯の割合が高く、半径500mでは64%、3kmでは47%でした。1世帯あたりの人数は、半径500mで1.6人です。入間市役所のほうは、どの半径でも単身世帯の割合が31〜33%でほとんど変わらず、1世帯あたりの人数は2.2人でした。人口の数字が近くても、住んでいる人の暮らし方は別物と考えられます。
同じ半径500mを、メッシュではなく町丁目の区画で計算すると、立川駅前は10,409人、入間市役所は8,661人になりました。どちらもメッシュで計算した値より1割ほど多くなります。どちらかが誤りというわけではなく、元にした区画の形が違うためです。比べるときは、同じ道具・同じ計算の仕方でそろえておくと、こうしたずれを気にせずに済みます。
論点5:人口とあわせて見られることが多い数字
商圏人口だけでは決めにくいので、次のような数字もあわせて見られることが多いようです。
- 近くの同業の数:人口が多くても、同じ種類のお店が多ければ1店あたりのお客さんは減ります。
- これからの人口:長く続けるお店なら、将来の推計人口や、ここ数年の人口の増減も手がかりになります。
- 昼間に集まる人:国勢調査の人口は住んでいる人の数なので、オフィス街や繁華街では駅の乗降客数などと組み合わせる例があります。
タスデータでは、周辺の施設の件数や将来の人口は、有料プランで住所リストに付けられる項目です。
まとめ
- 商圏人口は、地点を中心にした円の中に住む人の数で、国勢調査の区画ごとの人口を面積の割合で配って計算します。
- 1地点だけならjSTAT MAPかタスデータの商圏レポートで足ります。候補地のリストがあるなら、リストに一括で列を付けるほうが早く済みます。
- 駅前と郊外を比べると、半径500mでは似た人口でも、3kmでは1.7倍の差がありました。単身世帯の割合も大きく違います。複数の半径と世帯の形をあわせて見ると、違いが見えやすくなります。