商圏分析ツールの選び方 — 無料で使えるツールと、有料ツールの公開されている料金
商圏分析ツールは、無料で使える公的なツールから、年に数百万円かかる高機能なものまで幅があります。どれが合うかは、機能の多さより先に、調べる地点が1つか、候補地のリストか、そして使うのがたまにか、いつもか、で決まります。
この記事では、まず無料で使えるツールでどこまでできるかを書き、そのあと有料ツールのうち公式サイトで金額が公開されているものを並べます。金額は改定されることがあるため、確認した時点を併記しています。なお、このサイトのタスデータも商圏の数字を出すサービスで、その位置づけも最後に書きます。
論点1:商圏分析ツールは、役割の違う層に分かれる
| 層 | 主なツール | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 無料の公的ツール | jSTAT MAP(総務省統計局) | 1か所ずつ、半径の人口や年齢別の人口を調べる |
| 用途を絞ったクラウド型 | MAP-STAR Web診療圏分析 など | 診療圏など、決まった用途の分析をくり返す |
| 買い切り型のデスクトップGIS | TerraMap など | 地図を作り込み、社内で継続して使う |
| 高機能GIS | MarketAnalyzer など | 人流や売上の推計まで含めて、専任の担当が分析する |
上の層ほど機能は増えますが、金額と、使いこなすまでの手間も増えます。
論点2:無料で使える商圏分析ツール
jSTAT MAP(総務省統計局)
政府統計の総合窓口(e-Stat)が提供している無料の地図サービスです。候補地を中心に半径の円を作り、その中の人口と世帯数を国勢調査のデータでレポートにできます。ログインなしでも、円の作成と人口・世帯数のシンプルレポートまでは出せます。年齢別の人口や事業所の数まで入るリッチレポート、データの保存、住所の一覧の取り込み(ジオコーディング)は、e-StatのユーザIDでログインして使う機能です。利用料はどちらも無料です。手順はjSTAT MAPで商圏分析をする方法にまとめました。
半径の円を描くだけなら
人口までは要らず、店から半径1kmや3kmの範囲を地図で見たいだけなら、国土地理院の地理院地図にある「円を追加」で円を描けます。Googleマップには半径の円を描く機能がありません。くわしくはGoogleマップで半径の円を描く方法で書いています。
住所1つの人口・世帯数を見るなら
このサイトの商圏レポートは、登録なしの無料で、住所1つについて半径の人口・世帯数・世帯の構成と最寄り駅を出せます。
無料のツールで手間が増える場面
無料のツールは、どれも1か所ずつ調べる作りです。次のような場面では、調べた数字を書き写す作業が増えていきます。
- 候補地が10か所、20か所とあり、同じ条件で並べて比べたい
- 調べた数字をExcelに書き写して、一覧表を作りたい
- 毎月や四半期ごとに、同じ集計をくり返したい
論点3:有料の商圏分析ツールの、公開されている料金
有料ツールのうち、公式サイトで金額を確認できたものを並べます。
| ツール | 公開されている金額 | 形態・時点 |
|---|---|---|
| jSTAT MAP(総務省統計局) | 無料(初期費用・月額なし) | 公的統計の無料ツール |
| MAP-STAR Web診療圏分析(ワイ・ビー・シー) | 月額 18,700円(ブロンズ)/29,700円(シルバー)/33,000円〜(ゴールド) | クラウド型・2ユーザー目以降は別料金 |
| TerraMap Standard | 本体 638,000円+保守月額9,900円 本体 580,000円+保守月額9,000円(税別) | 買い切り型。上段はゼンリンマーケティングソリューションズの記載(2022年8月時点)、下段はマップマーケティングの記載(2024年3月末時点データ反映) |
| MarketAnalyzer 5(技研商事インターナショナル) | 初期費用 640,000円+年間利用料 1,500,000円(Basic・1ライセンス)/2,100,000円(Standard)/2,400,000円(Insight)(税別) | 高機能GIS。2026年7月時点の記載 |
TerraMapの金額が2つ並んでいるのは、取り扱う2社の公式ページで記載の時点が違うためです。検討するときは、実際の見積もりで確かめる前提の参考の数字として扱います。
並べると、月1.87万〜3.3万円(用途を絞ったクラウド型)、買い切り58万〜63.8万円と保守料(デスクトップGIS)、初期64万円と年150万〜240万円(高機能GIS)という価格帯に分かれます。
論点4:料金を検索しても金額が出てこない理由
商圏分析ツールの料金を検索すると、上位に並ぶのは比較サイトやSaaSの紹介サイトが多く、ツールを作っている会社の公式ページは多くありません。公式サイトでも、上位のプランや法人向けのプランは問い合わせ制になっている例がよくあります。
たとえばTerraMapは、Standardの本体価格は公式ページに書かれている一方、Web Plus・Web・DXといった上位や派生のプランは金額が公開されておらず、問い合わせ制です。ArcGIS(Esri)の個人向けライセンスも、ESRIジャパンの公式ページには日本円の価格がなく、米国Esriのページに案内される形です。相場が分かりにくいのは、公開されている情報がもともと少ないためです。
論点5:高機能GISが大きすぎることがある
MarketAnalyzerのような高機能GISは、人流データや売上の推計、細かな地図の表現まで扱えます。ただ、次の条件が重なると、機能の多くを使わないまま費用がかかることになります。
- 専任の分析担当がいない(ほかの仕事と兼ねて使う)
- 商圏を見るのは月に数回で、いつもではない
- ほしいのは主に人口・世帯数・年齢構成のような基本の数字
この場合は、無料のツールで1か所ずつ調べ続けるか、候補地のリストにまとめて数字を付ける道具に寄せるか、の二択になりやすくなります。
論点6:候補地のリストにまとめて数字を付ける、という選び方
無料で1か所ずつ調べるツールと、高機能GISの間に、住所の一覧にまとめて数字を付けることに絞った道具があります。地図の画面や凝った表現は持たない代わりに、候補地の一覧に、半径の人口・世帯数・年齢構成などの列を足して返します。
タスデータはこの使い方のサービスです。jSTAT MAPと同じ国勢調査(2020年)などの公的統計を使い、住所の一覧の全行に、半径500m〜3kmの人口や世帯数の列を足します。毎回jSTAT MAPで候補地を1つずつ調べて書き写していた作業を、まとめて済ませる使い方に向いています。
候補地の住所リストがあるなら、半径500m〜3kmの人口・世帯数・年齢構成を、リストの列としてまとめて足せます。
会員登録すると、Excelやcsvの住所の一覧をそのまま読み込めます。結果はCSVで保存でき、出典を書けば資料にそのまま使えます。
先に1か所だけ試すなら、商圏レポート(無料・登録不要)で、住所1つの半径の人口・世帯数と最寄り駅を見られます。
まとめ:調べる地点の数と、使う頻度で選ぶ
| 状況 | 合いやすいツール |
|---|---|
| 1〜2か所だけ・今すぐ・お金をかけたくない | jSTAT MAP、商圏レポート(どちらも無料) |
| 候補地のリストを同じ条件で並べて比べたい | 住所の一覧に列を足すタイプのツール(タスデータなど) |
| 決まった用途の分析をくり返す | 用途を絞ったクラウド型(月1.87万円〜の帯) |
| 人流や売上の推計まで、専任の担当が分析する | 高機能GIS(初期64万円と年150万円〜の帯) |
どのツールが高機能かより、調べる地点が1つかリストか、使うのがたまにかいつもかを先に決めると、合う価格帯が絞れます。